AJスタイルズとケニー・オメガ、それぞれの歩み
ケニー・オメガとAJスタイルズ、この2人は面白いくらい因果関係が濃厚で奥が深い。偶然とは思えないくらい対照的なキャリアなんです。「新日プロレス」で出逢った2人は「WWE」「AEW」と互いに別々の方向に歩みだしましたが、団体は違えど常に意識はしてるんだろうなと感じることがあります。
新日本プロレス時代、2人ともバレットクラブのリーダーとして圧倒的な存在感を示していましたね。衝撃が走った2016年の1月5日、タッグとして試合に挑んだ2人でしたが試合勝利後に突然、ケニー・オメガがAJスタイルズを片翼の天使で葬り追放!!
2人のキャリアにおける分岐点はここから始まったのではないでしょうか。新リーダーとなったケニー・オメガは実力ピカイチで新日本プロレスを背負う立場に。一方、AJスタイルズはWWEと契約してロイヤルランブルでデビュー。AJスタイルズに対してのWWEユニバースからの反響も上々で、すぐにメインストーリー路線に絡んでいきました。
バレットクラブ三代目のリーダーに就任したケニー・オメガは人気も急上昇、そして前人未踏の「外国人、初のG1制覇」を成し遂げます。このG1CLIMAX 26での決勝戦、本当にシビれる素晴らしい名勝負ですので見てない方は是非!!
ケニー・オメガがかつてのバレットリーダーを務めたプリンス・デヴィッド・AJスタイルズ、そして盟友:飯伏幸太選手のフィニッシャーを繰り出すんですね。1つ1つの技が綺麗で丁寧で、かつての同盟達へのリスペクトも込められていると思うんですよ。
しかも初代リーダーの技:ブラディサンデーから2代目リーダーの技:スタイルズクラッシュ、最後にケニーの必殺技「片翼の天使」と繋げ、まるでバレットクラブの歴史をケニー・オメガと共に振り返り、そして新しい時代を築き上げていく!そんな強い意志が伝わりました。
一方、AJスタイルズも9月11日に頂点に昇りつめます。Backlash2016大会において当時WWE世界王座であったディーン・アンブローズ(現在のジョン・モクスリー)からベルトを奪取してWWEで初の王座を獲得することに成功。WWEデビューしてから1年も経たずして世界王者となりました。G1のケニー・オメガ優勝を超える快進撃です。
となると2017年のレッスルキングダム11でのIWGPヘビー級王座、間違いなく期待が高まります。絶対王者であるオカダ・カズチカの保有しているベルトにケニー・オメガが挑むのですが、46分の死闘の上、敗北・・・ケニー・オメガの初戴冠は幻となりました。AJスタイルズとケニーオメガ、2人のキャリアにとってまさに光と闇のように対照的な2017年のスタートであったと思います。
「日本は俺のホーム」と語ったケニー・オメガ
2017年はさらに差が付く年でした。WWEに移籍したAJスタイルズはレッスルマニア33でWWEの会長の息子シェイン・マクマホンと試合をするなど着実に成功をおさめていきます。ご存知の方もいるでしょうが、シェイン・マクマホンとレッスルマニアで試合できるなんて、かなりの名誉なんですよ、WWEの御曹司ですからね。
しかし、ケニー・オメガはあまりメイン路線に絡めない2017年でした。新設されたIWGPのUS王座で初代王者になったのは名誉かもしれませんが、どうしてもIWGP世界王座・インターコンチネンタル王座と比較してしまうと霞んでしまう王座です。
しかも手にした王座がUSヘビーであることが皮肉なんです。ケニー・オメガが戴冠した5日後に、AJスタイルズがWWEのUS王座に戴冠しています・・・これは偶然なのか?母国ではWWEのほうが認知度も名誉も高く、せっかくケニー・オメガが戴冠したUS王座も一瞬でぼやけましたね。
WWEから何度もオファーがあり、それを断ってまで新日本プロレスを選択したケニー・オメガ。「日本ではレスラーがファンから本当のリスペクトが得られる」として、敢えて日本での試合にこだわるケニー・オメガだからこそ、US王座とかではなくIWGP世界王座に絡んで欲しいと思っていました。当時の運営への怒りです笑
新日プロレスへの残留を決めたケニーに対して、運営は容赦ないなぁと。WWEから電撃参戦したジェリコと試合を組まれた時、ケニーはどんな気分だったのかなと思う時があります。自分だったら、「だったらWWE行くよ!」って感じちゃいますかね・・・
それでも会場を盛り上げてファンを熱くする試合をこなし、ケニー・オメガって本当に強く逞しいレスラーなんですよね。だからこそ2018年6月の大阪でIWGP世界王座に初戴冠した時は、声を大にするほど会場内の歓声は鳴りやみませんでした。やっとAJスタイルズのキャリアに追い付いたとも思いました。
現在、AEW王者であるケニー・オメガは激しい試合をこなしながら名勝負製造マシーンとなっています。ふと思う時があるんですよ、今このような素晴らしい試合が見られるのはケニー・オメガがWWEに行かずに新日プロレスに残留したからだと。
その後のAJスタイルズも、WWEで中邑真輔とレッスルマニアで戦ったり、ジ・アンダーテイカーの引退試合を務めたり、重要なポジションを確立できました。AJスタイルズにとってもWWEへの移籍はタイミングが良く大正解だったわけですね。
DDT出身の路上王ケニー・オメガはストロングスタイル派、新日プロレスやAEWが向いているのでしょう。TNA出身のAJは技で魅せるタイプなのでエンタメ要素の強いWWEが向いていたのかな。お互いに別々の道を歩み、対照的なキャリアを築きましたが、それぞれが適した団体に移籍できたと思います。今後のお2人の活躍にも期待です。